9月末、八王子句会では、久しぶりにバスでの吟行会を行った。総勢12名で八王子駅南口を出発。連日の雨で天候が心配されたが当日は曇空。一路目的地に向かった。
車窓からは稔田・刈田・まだ緑の濃い晩稲田が楽しめた。最初の目的地は「室の八嶋」。ここは芭蕉が奥の細道の歌枕に選んだ土地。「糸遊に結びつきたる煙哉」の句碑があり、下野一の宮・大神神社の境内にある。小さな島が池に八つ。昨夜の雨でまさに煙るようであった。島には一社ずつが祀られてをり、拝しながら巡る。平日で訪ねていたのは私達だけで、しっとりと湿った境内には橡の実が沢山落ちていた。
次は足利市の「鑁阿寺(ばんなじ)」へ向かう。堀に囲まれた広い寺苑で、真言宗の古刹。地元では「大日様」と呼ばれ、親しまれているという。「鑁阿」の文字は尊氏の祖先の法名で、ここは足利氏の居宅跡。鎌倉期から焼けたことのない本堂は国宝指定。鐘楼等は重文になっている。境内の大銀杏は樹齢600年と云われ、黄葉はまだだったが、鬱蒼とした雄々しい姿だった。
昼食後「足利学校」を訪ねる。日本最古の学校。古くは平安・鎌倉から江戸期まで自学自習の学徒が集まっていた。フランシスコ・ザビエルは「日本で最も有名な坂東の大学、学徒3千」と世界に紹介している。明治期に幕を下ろしたが、足利市民の努力で平成2年江戸期の姿が蘇った。「學校」の扁額の門を潜ると古の学徒に戻ったよう。中は茅葺の方丈・庫裡・孔子の廟と整然と並ぶ。庭園には金木犀が香を放ち秋の深まりを感じた。
帰途はバスの中での句会。投句・清記・選句と滞り無く終わった頃、八王子に無事到着。終日降られることもなく、有意義な一日を過ごすことが出来た。(報告 田野倉和世)
当日句より
秋澄むや暗きに拝す孔子像通子
秋気立つ室の八嶋をめぐりたる英子
馬場となる翁のみちや小鳥来る真知子
足利学校木犀の香に戸を開くまさこ
かなふりの論語抄読む秋思かな美智子
新藁を室の八嶋にさすりをり文男
色鳥の室の八嶋になき合へり利子
足利のかなふり松や色変へぬ階子
栃の実を拾ひ神木仰ぎけり和世
秋雨や杉の香澄める翁径真智子
橡の実の落ちて静けし神楽殿博江
秋蟬のつひの声張る八嶋かな八起
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