深大寺・神代植物公園吟行記     橋本句会 松村由紀子

3月17日(日)は、春らしい暖かな日差しが降り注ぐ絶好の吟行日和だった。9時30分、深大寺山門に8人が集合。5年ぶりとあって、参加者の吟行への期待はふくらむ。
 志朴先生が、まず鶯の美しい声を聞こうと門前の道を案内してくださる。ちょうど鶯笛を奏でる人がいて、今のは本物今度は笛の音と音比べも楽しんだ。
 蕎麦切りの音を背に、いよいよ予定コースへ。まずは水生植物園。春蘭の花が咲いている。椋鳥が忙しく走り回るその先に、水面を見つめ微動だにせぬ青鷺。湿地にいちめんに広がる蘆の角など、先生が教えてくださる水辺に育つ様々な草の名を必死にメモ。頭上で鶯がいい声で鳴いている。
 次は深大寺境内。草田男の句碑、虚子像を拝し、開山堂へ。波郷師弟の句碑などを見ているうちに、未来カプセルと刻んだプレートが目に入る。名刹深大寺との意外な組み合わせが面白い。木々のざわめきの中を波郷の墓へと急ぐ。
 最後は植物園。椿園への途中先生がウグイスカグラという山野草を教えてくださった。公園内は未だ華やかな梅の花や、風に煌めく山茱萸の黄花が美しい。椿の花も様々で、艶やかな色を残した落椿が樹下に横たわる。無患子の実がたわわに実る木の下で昼食。深大寺蕎麦に走る句友も。
  1時よりの句会場は植物会館の会議室。あの情景をこう詠むのか!あの花は確かにそんな風情だった!タイムカプセルも句材!…吟行は皆が同じものを見るからこそ、普段の句会では気づけない学びができる。披講の後先生が特選句より特に選んだ天・地・人の句の良さをご指導くださり、終了。楽しくも有意義な句会だった。 (松村由紀子)
◆当日句より
境内に未来カプセル木の芽張る志朴
カリヨンの響く大空鳥雲に紀美雄
艶めきを残し落ちたる紅椿あきら
山茱萸の風に答ふる光かなみちこ
こぼれ咲くヒスイカヅラのおぼろかな佳也
紅三つ流れとどめて落椿吉光
そば手繰るおしどり夫婦うららけし哲朗
やはらかき日射しの静寂蘆の角由紀子
深大寺・神代植物園吟行記

深大寺にて