6月6日、多摩地区有志による青梅市「吹上しょうぶ公園」の吟行会があり、12名が参加した。集合場所はJR青梅線河辺駅北口。十数羽の岩燕が駅舎のまわりを髙舞うのを見て「雨は降らない」と予測、まさしくそのとおりで最高の吟行日和となった。巡ったのは吹上しょうぶ公園、妙高院、光明寺、勝沼城址の四か所である。

吹上しょうぶ公園は、バスで約10分。ここは勝沼城址歴史保全地域に囲まれた二ヘクタールの谷戸地である。谷戸保全のために花菖蒲を主体として整備されており、毎年六月には「花菖蒲まつり」が開催されている。

この日はまだ五分咲きとのことだったが、243種、十万株のそれは見応えのある菖蒲園。入口の池の睡蓮も見逃せない。蛙の声も澄んで聞える。花菖蒲まつりの期間中、無料のガイドボランティア・サービスがあり、早速依頼する。

男性ガイドの懇切な説明を聞きながら公園を一周した後、自由散策に。ガイドから花菖蒲についてのたくさんの事を学んでからの散策は、みなさん見る目が一段と広く深くなっている。色あざやかな立葵や花空木、水路の田螺、蝶、夏芹等々、「蝮に注意」の立札も目につく。

園内の高台に仮設売店のテントがある。昼食後、このテントの一角をお借りして青空句会をする。鶯を聞きながら谷戸風の吹き抜く句会は、実にさわやかでいいものである。

句会後、徒歩で約十分の妙高院、光明寺へ。二寺ともに本堂は閉ざされていて静寂そのものだが、光明寺裏の天然記念物の椎の大樹に触れて力をもらい、石垣に垂れて咲く定家葛の花の香にいやされる。

勝沼城址は、光明寺の裏山にある。竹落葉敷く坂道を登り辿り着くが、夏草の中に「城址」の標識が立つのみである。城の歴史に思いをはせ往時を偲びながら帰路に着く。豊富な句材に出合い、花菖蒲を深く知り、青空句会の楽しさを味わった吟行会であった。(報告:柿谷妙子)

当日句より

わが色は江戸紫よ花菖蒲あきを

江戸好み背丈まちまち花菖蒲

縺れたる蝶のつと消ゆ白菖蒲妙子

あでやかに花びら反りて八重菖蒲てる子

谷戸深く声響きけり夏蛙利明

谷戸渡る風のびやかに花しょうぶ富彦

畝ごとに彩競ひ合ふ菖蒲園

花菖蒲肥後熊本の地やいかに博之

立葵日ざし戻れば日に向けり美智恵

さきがけの風を捉へて白菖蒲

田螺這ふ休耕田の小流れに八起

花菖蒲薄日に映えて濃く淡く洋子