花ならぬ雪の吉野山の初景色
雪籠めの西行谷に薄日射す
そら耳か西行庵のしまき晴れ
庵辞して吉野葛買ふ雪催ひ
国栖人に紙漉の里問ふ窪垣内
まほろばの神の若水手に掬ふ
若菜摘む宮址へ畝傍山くきやかに
橿原宮二千六百七十五年の御慶かな
水煙の塔の裳階に初雀
吉祥天像にまみゆる五日かな
国宝の塔の飛天へ除夜の月
鑑真廟めぐらす濠の風花す
開帳の玉虫の厨子初明り
柿の葉を漬けて深雪の吉野建
注連縄の切り絵めでたし奈良格子
石川英子いしかわえいこ
石川英子いしかわえいこ
◆略歴 平成6年 「春耕」入会。平成7年東京例会。平成22年「春耕」同人、俳人協会入会、お茶の水句会、千葉句会所属、令和2年7月15日死去享年82歳