一畳のテントの中や初寝覚
雛飾るまではひつそりしたる部屋
春潮の海窪ませて渦生まる
寺前に住み朝遍路夕遍路
山門といふ薫風の出入口
父の日も寡黙をもつて過しけり
生きること時に忘れて昼寝かな
島ひとつ丸洗ひして夕立去る
地に足を降ろして終る松手入
老人にまだなりきれぬ敬老日
人間に成り済ましたる案山子かな
真ん中の窪みし硯洗ひけり
年の夜に見つめる南十字星
一輪に呼び止められし返り花
手の力抜きてつかみぬ寒卵
長谷川雅男はせがわまさお
長谷川雅男はせがわまさお
◆略歴 平成6年「糸瓜」入会。平成12年「糸瓜」同人。平成14年「糸瓜」終刊。平成18年「春耕」入会。平成19年「春耕」同人。俳人協会会員 平成18年5月退会