鍋の蓋なだめて炊ける七日粥
針供養済ませてくぐる寿司のれん
如月の満月観むと鍵を解く
料峭や女ばかりの文弥の荷
朱鷺に声かけて畑打ちはじめけり
雪吊を解かれし縄の地に乱る
一騒ぎして葭切の移りけり
夜鷹啼く紙燭明かりの能舞台
接待の甘酒の濃し一夜能
八朔を灯し始めの盆燈籠
み仏の相乗りで来る瓜の馬
雨乞ひの癋見の面や世阿弥の忌
勝牛の舌が巻き取る花芒
望の月鱗ひかりの能登瓦
大白鳥真綿のごとく田に散れる
池野よしえいけのよしえ
池野よしえいけのよしえ
◆略歴 昭和52年「風」入会。平成3年「春耕」入会。平成13年「春耕」同人。平成20年春耕賞。