大声で叱る母ゐてあたたかし
紙漉きの一重一重に水重ね
鉤道の寺町あたりおぼろ月
千空の詠みし青田に日の移る
竹の子汁杣が鯖缶開きけり
幣肩にのぼる行者や雲の峰
光の輪生れ継ぐ泉汲みにけり
やはらかに雨の降るなり蓮浮葉
囮鮎貸し借りもして釣敵
祈る間にはや瀬に乗りし流し雛
教科書に墨塗りしこと終戦忌
千段の磴の一山滴れり
老いしらぬ与太先生や立佞武多
義仲寺へ舟のぼり行く鳰の声
木洩れ日の行者の径や葛の花