立春大吉傘寿の母の金糸帯
紙切れのざらつく音や納税期
炙り子に伏せる作務衣や春霙
糸遊や室の八嶋の水明り
黒南風やへしこ樽据う朝市女
縁先に母の野良着や半夏雨
結願や紅あぢさゐの風こぼる
夏休み座敷童子が友となり
瓦斯灯の点る運河の霧笛かな
学僧のこぼしてゆけり萩の露
埋火を搔く夜通しの牛の番
鷹匠の腕高々と鷹を待つ
寒立馬日の入る草に歩を運ぶ
冬紅葉残る光を放ちけり
哀しみが手元に灯る聖夜かな