竜天に登り泡ふく甕の藍
蒸籠の青き湯気吐く蓬餅
魚は氷に上り新作柄を織る
機糸の屑つけて座す雛の宴
田を植ゑて百筋青き風生まる
まくなぎの集まるところ無風なり
鍬打ちし手のひら厚き生身魂
さらさらと米搗く音の納屋涼し
胸で波掻き分け七夕竹流す
ひぐらしの声に始まる野外劇
夜濯の水に強張る阿波しじら
豊作の報に安堵や病める母
夕空を大きく歪め鵯の群
外竃の残り火青む居待月
雪蛍逃ぐるでもなく遠ざかる