したたりや木の間に瀬田の水明り 幻住庵
一輪の赤き薔薇足す多佳子の忌
煌々と残り戎の夜店の灯
あの若き蛇の居さうな畑日和
胡瓜捥ぐ二泊三日の旅終へて
朝靄の中を豆ひく丹波人
深吉野の竹の皮なる流し雛
恋猫がごろりと島の銀座街
潮騒や紀伊も四国もおぼろにて
玉砂利に風の小道や散黄葉
本陣の上段の間に聴くちちろ
襟巻のやうに花盛り納棺す
神将の影とりどりに秋深し
堰音に嵯峨野の秋を惜しみけり
大津絵の鬼を見にゆく花見客