冬の雉子隠るるもののなき野面 前川みどり
埃茸踏みて山路のおほわらは 前阪洋子
波形の欄間の彫りの春埃 真木朝実
麗かや子ら寝かしつけ機を織る 真嶋陽好
あまめはぎ去りたるあとの藁匂ふ 升本榮子
演じ手は悲劇のつもり村芝居 松井春雄
地下鉄を出で名月の家路かな 松川洋酔
柄を替へて包丁もどる年用意 松島徹
病癒え踏み出す一歩春の土 松村由紀子
冬うらら遍路の鈴に会釈して 松谷富彦
河骨や一輪光る水の上 丸山はるお
蕗味噌や日の出待たずに山仕事 峯尾雅文