初夏にしては肌寒い5月17日、烏山句会の13名で「府中郷土の森博物館」に吟行しました。遠足の園児らも並ぶ正門前に集合。園内ではまず江戸時代から昭和初期にかけての市内にあった建物を移築・復元されたゾーンを見学。明治天皇が兎狩りの際に休憩、宿泊された府中大宿の佇まい、薬舗の看板が懸り、いくつもの武者人形が飾られた箱階段のある蔵造りの店、町役場や黒い角柱型ポストのある郵便所など。茅葺農家では竃や囲炉裏を懐かしむ人と、知らない人の世代のギャップを感じるひとこまもありました。

 自然豊かな園内には、今まさに竹皮を脱いでいる竹林、刈り取る寸前の麦畑、代搔きを終えた田んぼ、まだ蕾の紫陽花の傍では水車小屋を見学。また満開のえごの花、山帽子、あやめ、きすげなどの花や、睡蓮の池の大鯉との出会いがあり、七千万年前の樹木化石の珪化木や、縄文時代の遺跡、まいまいづ井戸など古代にも思いを馳せ盛り沢山の散策でした。

 昼食後、博物館の会議室で句会。個性あふれる句が沢山読み上げられ、いつもとは違う句会となりました。その後、居酒屋で反省会を兼ねた懇親会を和気藹々のうちにお開きとなりました。(報告 小山田淑子)

当日句より
飛んでくるたんぽぽの絮天使めく明彥
竹皮を脱がず伸びゆく力かな正子
箱階段残る屋敷の武者人形淑子
垣も竹四方に竹ある竹の秋房子
睡蓮の葉裏たゆたふ鯉の影やす子
睡蓮のしじまに鯉の波紋なす大和
流れ落つ滝の轟音子らの声栄子
えごの花どこかゆるみし水の音富子
実梅落つ乳鋲錆びし脇本陣忠衛
夏炉焚くかつての生活あるごとく葉子下草の色に紛れて実梅落ついづみ
店蔵の昼を灯して武具飾る洋子
蓮浮葉鯉のしぶきに浮き沈む貴美惠