市ヶ谷句会は、昭和53年にスタートした。春耕の中でも最も古い句会ということになる。11月19日、発足40周年(正確には41周年)を記念して吟行句会を行った。
場所は、市ヶ谷句会が、最初はフジテレビの社員コーナーの和室を句会の場所として始まったいきさつから、港区のお台場を吟行した後、フジテレビで句会を催すこととなった。
棚山波朗主宰は、体調不良で参加できなかったのは残念だったが、秋のさわやかな日和のもと、池内けい吾氏、柚口満氏ら15人が集い、午後2時から吟行を楽しんだ。コースは、お台場海浜公園駅→台場史跡→オリンピック・トライアスロン会場となる台場ビーチ→フジテレビ。
台場は、ご存じのように黒船来航に驚いた江戸幕府が急遽設けた砲台が置かれたところ。この砲台のおかげでペリーは江戸上陸をあきらめ、横浜沖に引き返したという。現在は史跡の台場に、砲台2台が残されている。吟行の一行は、砲台のあまりの小ささにびっくり。
台場見物の後、埋め立て工事の際に作られた人工の渚を散策。凪に波間に憩うカモの陣、砂に書かれたハングル文字の愛の落書き、埠頭のゆりかもめ、秋の日ざしに佇む自由の女神像など吟行の種探しをしながら、およそ1時間半散策した。
句会場はフジテレビ18階の社員食堂「DAIBA」。隅田川の船の往き来、レインボーブリッジ、都心のビル群を望める抜群の景色が自慢の食堂とあって一行は、句づくりも忘れ、しばし、景観談義。今回は3句出しで、皆さん余裕があったようだが、茜色に染まっていく東京の夕焼けを見ながら句作にいそしんだ。別欄の各俳人の力作を味わってください。句会を終えたころから黄昏時となり、東京タワーをはじめとするビル群の灯、ネオンに彩られたレインボーブリッジなどマンハッタンを思わせる夜景に変わっていく模様を眺めながらの夕食懇談会となった。
席上、新宿区河田町にあったフジテレビの旧社屋の句会のころの思い出話や春耕の創始者皆川盤水先生の人柄、逸話などに話が及び、会発足40周年を記念する吟行句会は、初冬の台場を詠うとともに、会草創のころの市ヶ谷句会をしのぶ楽しい集いとなった。 「報告 上野直江」
当日句より
一湾に日の射すところ鴨の陣けい吾
冬うらら渚に記すラブレター満
ハングルの恋文砂に浜小春大和
逆光の湾に影なす浮寝鳥洋酔
凪ぎわたる台場の海や冬日濃し八起
砲台へ鳥声豊か小春風和子
うらうらと鴨の陣解く小春凪岳
差し潮に陣を崩さず浮寝鳥研治
海面を芥子粒ほどに浮寝鳥美代子
人気なき砲台跡や返り花富子
浮寝鳥入り日のきらに漂へり里香
冬の雲艀の音をくぐもらせ直江
女神見て片手上ぐる子冬うらら洛斗