鷽替・寒牡丹吟行記

多摩地区会員有志19名による亀戸天神の鷽替神事と上野東照宮の寒牡丹の吟行に、棚山主宰の協会業務の都合をつけられてのご参加を得て、初天神の1月25日に吟行した。

亀戸天神はもと東宰府天満宮とも呼ばれ大宰府天満宮と同じく鷽替神事も許された由緒あるお宮。太鼓橋の上からは本殿左側の授与所前に古い木彫鷽を納めて新しい鷽を授かる長い行列が見える。舞殿の獅子舞の笛・鼓の音や本殿の大太鼓の音が響き、咲き始めた300本の梅のほのかな香りが漂っていた。

午後の牡丹苑は月曜日のため人通りの少ない静かな上野公園の中にあり、東照宮から流される琴の音と五重塔を背景に、二百株の寒牡丹が色・形とりどりの顔を藁苞の中から覗かせる。有名俳人の作も含む俳句の札も。茶店の傍には緋毛氈の長椅子、短冊、炭火を熾した手焙りまで置かれていた。

参加者は江戸以来の伝統行事と江戸風情の牡丹鑑賞で楽しんだ寒中の吟行を終え、当日句各一句を認めて散会した。(報告:勝股あきを)

(当日句)

たまさかの日を満面に寒牡丹   波朗   太鼓橋に過ぎし光陰初天神   あきを

ぼうたんの一株ごとに美の極み 閏江    冬牡丹王者のごとく咲きにけり 京

鷽替や晴れて口笛吹き帰る   忍     替へられし鷽の積まれて初天神 利明

鷽替に木彫の運をたくしをり   敏江   幹を統べ凛と一輪寒牡丹     利子

鷽替の三万体に人並ぶ       徹     百咲けば百の恋あり寒牡丹    富彦

咲きみちて蕊ひろげたる冬牡丹  久子   晴天にひかれ鷽替里神楽     ひとし

被せ藁に一期の彩の寒ぼたん  博     撫で牛の艶位置につく初天神   文男

替へし鷽樟の根方で見せ合へり  まさこ  大鷽の守る天神鈴光る      瑞子

鷽替への眼澄むるを選びをり  美智子   鷽替への胸の朱色のゆるぎなし  美保

初天神猿も舞ひたる笛太鼓   階子    真つ赤なる鷽の口拭き替へにけり  實