谷保天満宮吟行記

燃え盛るどんど焼き

燃え盛るどんど焼

正月三が日もあっという間にすぎた1月11日の朝、春耕府中句会15名とかわせみ句会3名が東京都国立市の谷保天満宮に集合した。この天満宮で執りおこなれる左義長(どんど焼き)の吟行のためである。

谷保天満宮は東日本最古の天満宮であり、亀戸天神社・湯島天満宮と合わせて関東三大天神と呼ばれる。この地に配流された菅原道武(菅原道真の三男)が延喜3年(903)父親の死後、その霊を祀ったのがその始まりである。道真公は周知の様に文学の神、詩歌の神として多くの人々に崇められ、谷保天満宮も左義長、合格祈願、七五三の祝等で大いに賑わう。

境内の撫で牛の前に大きな餅花が飾られ、数十羽の放し飼いの神鶏が我々を迎えてくれる。神鶏は餌を十分に食べ、好き勝手に歩き回っているので丸々と太り羽根も艶々とし元気である。消防団が周囲の樹々にホースで放水を始める。たっぷりと放水するので、あちこちに水溜ができる。神鶏が大勢の人垣を恐れることもなく、その水を美味しそうに飲んでいる。

神主の祝詞のあと、山積みになっている正月飾り、書初め、大達磨に火が点けられる。徐々に燃え盛り焔が高く高く伸びていく。竹がバンバンと大きな音で爆ぜ、火の勢いと熱いので人垣が後退する。町内会の人々の手による甘酒や篠竹に刺した繭玉(餅団子)が百円で販売されているので、長い行列に並ぶ。甘酒が美味しい。火焔が静まり消防団が熾を外の輪に広げ、その熾に見物人が長い篠竹に刺した餅を差し出し焼く。大人も子供も楽しそうだ。

谷保天満宮を入って左手には三百五十本の梅園があり、暖冬の今年は紅白の梅が咲き始めていた。その中に谷保天満宮を愛した作家の山口瞳(国立市)の文学碑もある。屋台で販売の合格祈願の福饅頭や美味しそうな匂いの壺焼芋に長い行列に会友も並ぶ。

天満宮を後にし谷保の小川に沿って吟行する。大きな青鷺が一羽、農小屋の屋根の上で日光浴かじっとして動かない。城山のほとりを歩き防風林のある古民家を見学する。素晴らしい晴天に恵まれ、風もなく良い吟行であった。(報告:中村 敬子)

吟行参加者たち(谷保天満宮境内で)

吟行参加者たち(谷保天満宮境内で)

当日句より

太陽をこがして猛るどんどかな   妙子  炎立ち鳥一斉に発つどんど     美智恵

遠まきの人の頬染めどんどの火   由志美 左義長を祓ふ神主声透る       徹

早梅のむせてゐるなり谷保どんど  富彦  どんど爆ぜ子らの声爆ぜ谷保天神  久子

竹爆ぜて幣高舞ひし吉書揚     政美  どんど火の奥の奥よりまた猛る    功

どんど焼き曇天昇り頬染める    知子  どんど焼福を願ひの爆ぜる音    弘枝

燃えさかるどんど見上ぐる二十の目 惣子  黒焦げの達磨転がる大どんど    道子

天神の炎立つなり吉書揚げ     敬子  神鶏の遊ぶ天神どんど焼き     てる子

どんどの火上りて竹の葉逆巻けり  洋子  神鶏の黄金耀ふどんどの火     和世

飾り竹折れて火を噴くどんど焼   伊代乃 だるま落つ顔より火を吹くどんどやき 君代