泉岳寺義士祭吟行記

12月14日と聞くと義士討入りの日で何か心が急くものがある。早速、義士祭の日に両国の吉良邸跡とその界隈を巡ってから両国橋を歩いて渡り、その後泉岳寺まで移動し義士の墓参をする吟行を行った。参加者は多摩地区の有志19名。

両国駅を出てすぐの横綱横丁に入ると店名や暖簾に「元禄亭」「吉良亭」の文字が目に。途中地元出身の芥川龍之介、勝海舟の碑や案内板を見てから吉良邸跡に着くと、地元保存会の方々の供養の最中。ここは吉良公の上屋敷跡の一角を小公園とした所で、なまこ壁、長屋門を模した園内で上野介の座像、首洗い井戸などを見学。園外で甘酒の接待を受ける。

京葉道路を両国橋方面に少し歩いた所にある回向院では振袖火事の無縁仏などの供養塚、鼠小僧次郎吉の墓、力士の慰霊のための力塚などを見学後、冬鷗の飛ぶ両国橋を渡り浅草橋へ。ここで昼食後、地下鉄で泉岳寺へ。

週日ながら参拝客は多く、墓地へ入る門まで五列の長い行列につく。浅野内匠頭の墓をはじめ義士の墓に線香を手向ける内に、最後になった堀部安兵衛親子の墓前ではすっかり香煙にむせてしまった。

終りに義士行列を見た時の感動。高々と掲げた上野介の首級の包みに目を見張った。

数々の史蹟に触れて歴史に深く思いを馳せ、その上貴重な行事の体験ができて、心に残る吟行であった。(報告:石田瑞子)

 

◆当日句より

義士の日の線香残り火をつなぐ   文 男   石けづる義賊の塚や冬ぬくし    階 子

鎮魂の香煙ゆらす討入り日     瑞 子   心読の行年寒し義士の墓       忍

鯛焼をほほばり義士の列を待つ   利 子   首かかぐ義士行列や雪もよひ     實

みな若き義士の行年冬の雲     吉 和   大石の像に冬雲のしかかる     敏 江

義士の日の吉良公像に見据ゑらる  あきを   物語義士の数だけ美しく      ひとし

着ぶくれて首洗ひ井戸覗き込む   美 保   どの塚も木の葉散り敷く回向院    博

冬うらら巡る手向けの四十七士   真智子   陣太鼓近づきて来る義士会かな   利 明

義士の日の香煙空を冥くせり    美智子   橋一つ越して下町年暮るる     浩 平

穏やかな吉良の座像や冬ぬくし   まさこ   神杉の虎落笛かな泉岳寺      哉 子

吉良邸の跡地に桜冬芽かな      徹