梅澤忍さん作成の吟行案内を手に、国立句会の12人が、11月28日の10時に西立川駅に集まった。昼の気温が6度で時おり時雨が降ったが、生江通子先生以下二十四の瞳が、未だ見頃の紅葉に彩られた広大な公園を見て歩いた。
 先ず大きな「水鳥の池」を半周した。鳰、真鴨、軽鴨などが潜ったり、泳いだりしていた。岸辺の枯れた葦や蒲の間を、大きな鯉も泳いでいた。池の周囲には落葉樹が多く、赤いカエデやモミジが、美を競っていた。巨大な樹木があり、鈴懸かなと云う声に、鈴懸間違いなしと菊池ひとしさんが断定し、鈴懸も俳句料理の食材となった。

 山茶花や時期外れのボケなども楽しみ、広い「みんなの原っぱ」を抜けた。畑や水田まであり、春耕ならぬ冬耕も見られた。「こもれびの里」に入ると、移築した大きな農家もある。腹の虫が鳴きだす頃には休憩所に着いて、各自が持参した弁当を開いた。

 幹事の小林啓子さんらの尽力で、日本庭園内の「歓楓亭」を句会の会場として予約してあった。そこに入る前に手前の休憩所で、みな寒さに震えながらも、脂汗を流して当日句の5句を捻り出した。
 歓楓亭は林泉回遊式庭園の主役として、数寄屋様式で作られている。けれども、句会が終わるまでは周囲の紅葉も建物も、愉しむ余裕がない。欠席投句2名を含む70句が、斎藤やすこさんの美声で披講 された。一句でも自分の句が読まれれば、燃えるような楓の紅葉が目に入り、歓楓亭の名に恥じない。
 句会が終わると、3時50分発のパークトレインに乗る人の為に、早めに外へ出て記念撮影した。徒歩組は、皇帝ダリアの花やメタセコイアの紅葉といった、由緒正しい帰化植物を見つつ出口で散会した。
 寒くとも、稔り豊かな句会であった。「報告 本郷民男」

当日句より
池めぐる雨に散り敷く落葉みち通子
田舎家の土間の吹き抜け榾明り
山茶花の莟にのこる寒さかな久子
鈴懸の幹の白きも冬構へひとし
まだ少しみどり残れる枯蓮田てる代
雪吊の松に寄りゐる舫ひ舟啓子
山茶花の楚々と散りゐる雨の庭やす子
山茶花とことばかければ散りにけり幾子
古民家や祖母の好みし吊し柿久枝
トラクター冬耕の坂登りをり和子
茅葺きの厚き軒端や吊し柿洋子
鴨の曳く水脈大池の線画かな民男
ふと消えてあらぬ所にかいつむりえつ子
枯蓮や折れ伏す沼に沈黙す良一