烏山句会 蘆花恒春園吟行記 

11月24日(金)快晴に恵まれたこの日、烏山句会は総勢17名で世田谷区の「蘆花恒春園」に5年ぶりの吟行を行いました。
 地元の会員が多く、バスや自転車など三々五々恒春園の正門に10時に参集。恒春園には『不如帰』『自然と人生』『みみずのたはこと』などの名作で知られる明治・大正期の文豪、徳冨蘆花と愛子夫人が、後半生を過ごした住まいと、庭、蘆花夫妻の墓地などがあります。大和先生から吟行が初めての方もいましたので吟行での注意点などご指導を頂きました。記念館には蘆花が文学と農業を両立させた様子や、トルストイとの文通の書簡なども残されていました。また、愛子夫人と出掛けたヨーロッパ旅行の様子や地元の方々との交流、蘆花が晴耕雨読の田園生活を送った様子等伺い知ることができました。蘆花旧宅の傍には長兄蘇峰氏が銘を刻んだ夫妻の墓地があり各々詣でました。近くの水道の蛇口に誰かがカマキリを見つけ、この時期に、とみんなで珍しそうに見入ってしまいました。
蘆花恒春園

夫妻の庭のかまきり

 今年は暖かく銀杏黄葉の色づきは少し遅いようでした。プラタナスや楓など枯葉を踏みしめて歩いていると子供たちが団栗を拾ったり、落葉を広げて歓をあげたりしていました。また、近くにはドックランもあり、穏やかな平和なひとときを感じることができました。
 句会は13時半の投句締切りで、烏山区民センターで行い、16時散会となりました。その後有志で茶話会に参加。話が弾むなか釣瓶落としの街にそれぞれ帰宅の途に就きました。 朝から日暮れまで吟行三昧の冬のうららかな一日となりました。(鈴木知子記)
 
 
 
 
〇当日句より
 

枯蟷螂なほも威しの面構大和
昨日より今日一段ともみづれり幸子
日を吸ひてなほ色薄き帰り花優子
故郷の記憶は老いず枯葉道年成
冬ぬくし植木屋さんの仕事ぶり千鶴
団栗やひとつ拾へば数多落つ淑子
雨読する蘆花の火鉢の炭の痕正孝
小春日に吟行出来るしあはせよ房子
露けしや蘆花の手擦れの英訳書やす子
蘆花旧居明治の息吹枯葉散る知子
藁葺きの土間のすき間に冬来たる栄子
竹林に冬の日揺れて節確か美代恵
雪蛍空に紛れて見失ふ富子
冬晴に天射す如く櫟伸び葉子
蘆花旧居歪む硝子戸冬ぬくし正樹
武蔵野の紅葉且つ散る蘆花旧居洋子
箒目の整然として冬の庭貴美恵