当句会、満5年を記念し、秋川渓谷吟行を計画。5月29日、棚山波朗主宰・生江通子先生ほか総勢14名の参加で実施した。JR武蔵五日市駅より、車で10分。秋川渓谷沿いの古刹「広徳寺」へ。
 臨済宗建長寺派の寺院で山門は江戸中期、総門は室町期の面影を留める茅葺、重厚な建造物である。

国立句会

広徳寺

 境内は鬱蒼とした木々に包まれ、老鶯の声に迎えられる。大銀杏や天然記念物の「かや」「たらよう」の大樹他、沢から水を引き入れた古池は、河骨・あやめ・水芭蕉等水辺の植物や、森青蛙の生育池でもあり、草陰で蛙が盛んに鳴き交している。
 境内散策後、バスで奥多摩入口の岩瀬峡へと移動。
 ここには250年の時を経た茶屋があり、敷地内より渓谷を望む展望テラスへ。ここでじっくり句作に専念する。渓谷の流れが大きく湾曲するこの位置は川幅が狭まり、真っ青な淵と早瀬とが交錯する絶好の景勝地である。今まさにせせらぎの音に混じって河鹿の鳴き声を存分に聴くことが出来た。
 句会場は、渓谷に面した緑陰の奥深い、心安らぐ雰囲気の一室。素晴らしい一時を過ごすことが出来た。天気は木洩れ日が眩しいほどに回復。句会後の会食も和やかに、一同有意義な一日を過ごすことが出来た。                       (報告 梅澤忍)

当日句より
水音に心開けば河鹿鳴く波朗
水音に声をころがす河鹿かな通子
山門を吹き抜くる風新樹光 
わら屋根をあまた色取る草の花久子
山門の銀杏の大樹風薫るひとし
岩の瀬をころがりてゐる河鹿笛啓子
渓流の音にまぎれて河鹿鳴くやす子
瀬の音を遠く近くに河鹿笛幾子
渓流の音重なりて河鹿笛久枝
山門を越え老鶯の谺かな浩平
溶け込みし魚板の凹み薄暑かな和子
老鶯を迎へ入れたる禅の寺洋子
渓流の音高くなり夏兆す良一
草覆ふ茅葺屋根の夏の蝶えつ子