花了る樹にやはらかき息のあり 鏡原敏江
塩踏めば足に力や火を渡る 柿谷妙子
腹這ひて古地図に遊ぶ夜長かな 笠松秀樹
駈けおりて来る月山の草紅葉 粕谷容子
霊山の風巻き揚ぐる鷹柱 勝股あきを
煤逃の一歩を記す挙兵の地 角野京子
鈴音ごと髪置の子を抱き上ぐる 我部敬子
雑踏の西日の端に恋占女 鎌田とも子
川留めに栄えし宿場鴨渡る 唐沢静男
門火焚く母黙々と黙々と 岸 恒夫
舞ふシテの紙燭を揺らす梅雨の夜 菊地栄子
広島の凪の静けさ原爆忌 菊地ひとし