「俳句文法」入門 (74)
─── 「係り結び」について 其の2「ぞ」「なむ」「や」「かは」─── 大林明彥
係助詞には「ぞ・なむ・や・か・こそ」があり係結びの法則が生じます。「は」も係助詞ですが終止形で言い切るので係りと結びはあるものの法則の中には入れていません。「は」は疑問・反語のやとかに付いて「やは」「かは」として使用される時があります。やは・かはで各々一語と考えます。整調と強意ですかね。
「ぞ」は平叙文に付き強意・強調を表します。「なむ」も同じです。古今集「故郷は花ぞ昔の香に匂ひける」。仮作文「雪なむ
降りける」。いずれも連体形で結びます。「ぞ—ける」「なむ—ける」。
生きのびし思ひぞ寒の明けにける詠人しらず
つつく棒くはへ亀なむ鳴きにける詠人しらず
右の二句では係りは「ぞ」「なむ」。結びは「ける」ですね。けるは過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形。
「や」「か」「やは」「かは」は疑問文に付き疑問か反語を表します。古今集「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身一つはもとの身にして」。係りは「や」で疑問を表します。結びは「ぬ」で打消の助動詞「ず」の連体形。徒然草「花は盛りに月はくまなきをのみ見るものかは」。これは反語を表す。文末用法と言います。
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