春耕俳句会は、有季定型の俳句と和楽の心で自然と人間の中に新しい美を探求します。第五感・第六感を働かせた俳句作りを心がけます。
連載記事 - 月刊俳句雑誌「春耕」掲載

自由時間

自由時間 (97) 2021年7月号

7月の京都は、祇園祭一色になる。その山鉾の豪華絢爛な飾り物はてっきり純和風のものだと思っていたが、舶来の、見るからに高価そうな古い絨毯やタペストリーが山鉾を飾っているのである。ヨーロッパでは幻とされる古い絨毯や、重要文化財に指定されているタペストリーが山鉾に懸けられているのである。祇園祭が「動く美術館」と呼ばれる所以である。

自由時間 (96) 2021年6月号

猪苗代湖のすぐそばに、外観はまるでコンテナのような野口英世記念館がある。一階の真ん中に板敷きの広間があって、囲炉裏が切ってある。1歳5ケ月の野口英世(当時は清作)は、エジコ(嬰児籠)に入れられて、囲炉裏の傍に置かれていた。清作がどうやったのかエジコから抜け出して囲炉裏に両手を突っ込んでいたのである。両の手がひどい火傷を負ったが、特に左手がひどかった。人差し指から小指までの第一関節が全てなくなり、4本がひと塊になってしまった。親指は手首のところまでずり下がって手首にくっついてしまった。この不具となった左手が彼の一生の軛となった。彼の身に添った強烈な劣等感・人並外れた自己顕示欲の源泉となった。

自由時間 (95) 2021年5月号

宇宙には無数の星がある。われわれが夜空に見る星ですらあの数だ。地球に光が届いている銀河の数は少なくとも1700億個で、それぞれの銀河に含まれる恒星の数は、小さい銀河で1000万程度、巨大な銀河では100兆個に達する。そのほかに惑星や彗星があるから、まことおびただしい数の星を見ていることになる

自由時間 (94) 2021年4月号

フランソワ・ポンポンとはフランスの彫刻家である。ロダンの助手を務めたこともある彼は、動物彫刻家として有名だ。その代表作は名作の誉れの高い「シロクマ」である。パリのオルセー美術館に展示されているが、実物大のように見える白い大理石のシロクマは、なめらかな曲線に包まれ、愛らしく、凛々しく、一目で虜になるような彫刻だ。

自由時間 (93) 2021年3月号

高浜虚子は、「ホトトギス」誌大正2(1913)年5月号から、初心者のための「6ヶ月間俳句講義」を連載した。その講義をまとめて本にしたのが『俳句とはどんなものか』である。

自由時間 (92) 2021年2月号

華やかな芸能界に身を置き、順風満帆であるかのように見えていた彼、なかにし礼は2020年12月23日、若いころからの持病だった心臓病の悪化により入院先の病院で死去した。

自由時間 (91) 2021年1月号

1980年のこの日、元ビートルズのジョン・レノンが、ピストルで撃たれた。犯人はハワイからやってきた25歳の白人青年で、ビートルズのファンであるが、ジョンの言動や神を冒涜するような歌が気に入らなかったようだ。この時ジョンは40歳。そして今年は没後40年。つまり、2020年は、ジョン・レノン生誕80年、没後40年のダブル・アニヴァーサリーということになる。

自由時間 (90) 2020年12月号

ロンドンから北西へ80㌔のところに、ブレッチリー・パークと呼ばれる広大な敷地を持つ邸宅がある。第二次世界大戦中、ここに政府暗号解読学校が置かれていた。現在はそこで使われていた機器類を展示する博物館になっている。ナチスの暗号を解読するのに役立った元祖コンピュータも復元されて展示されている。ここに置かれていた政府暗号解読学校の最大の功績は、ナチス・ドイツの解読不能とされていた暗号「エニグマ」を解読したことである。解読したのは天才数学者アラン・チューリングである。

自由時間 (89) 2020年11月号

2020年10月世界有数のオークションハウスであるクリスティーズNYで行われたライブ・オークションに珍しいものが出品された。恐竜ティラノサウルスの全身骨格標本が登場してきたのである。高さ4㍍、長さ11・3㍍。1987年に米サウスダコタ州で発見されたものだ。ティラノサウルスは6800万年前~6600万年前に、つまり恐竜が絶滅する直前に、北米大陸を跋扈していた最強の肉食恐竜だ。その恐竜が、6600万年前に突然滅んだ。なぜ滅んだのか。現在一番有力なのは、隕石落下説である。

自由時間 (88) 2020年10月号

今年(2020年)は、ベートーヴェン生誕250周年に当たる。歴史に残る人物の生誕あるいは没後〇〇年を記念していろいろな催し物が行われるのは世の習いである。榎本健一(没後50年)、円谷英二(同)、ジミ・ヘンドリックス(同)、三島由紀夫(同)。今年がメモリアル・イヤーとなる三島由紀夫について採り上げる 三島は、余程ノーベル賞が欲しかったらしい。ドナルド・キーンによると「既に国内外で作品は知られ、三島は海外で最も有名な日本人だった。だが、その証しが欲しかった。最高の栄誉、ノーベル文学賞が欲しいのだと私は直感した」そうだ。

自由時間 (87) 2020年9月号

8月は戦争が近くなる月だ。広島・長崎の原爆記念日、終戦記念日。今年はさらに新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、気分が重苦しい。その上、熱中症の死亡者数が新型コロナウイルスによる死亡者数を上回るという猛暑に襲われて、泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目だ。今回は、第二次世界大戦中の感染症にまつわる喜劇(?)と悲劇を一つずつ。

自由時間 (86) 2020年8月号

2020年5月25日アメリカ中西部の北、ミネソタ州の最大都市ミネアポリスで黒人の中年男性がたばこを買った。その時使われた20㌦札が偽札なのに気付いた店員が、警察に「酔っ払いが偽札を使った」と通報する。パトカーに連行し、乗せると、おとなしくしていない。その男性を車から下ろしうつぶせに倒し、左膝で男の首を押さえつける。男は何度も「息ができない」と叫んだが、警官は膝を緩めない。動かなくなってからも緩めなかった。救急車が来てようやく緩めたが、こと切れていた。男の名前はジョージ・フロイド(46)といった。

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