はいかい万華鏡(11)
─ トランプのアメリカを見守る ─
                                             蟇目良雨 

 転校してすぐに遭ったいじめも解決して、小学校を卒業して同じ建物に隣接する本丸中学校に入学した。
 幼少の頃の病弱体質がいつの間にか直り元気に中学生ライフを楽しんだ。登下校の際、授業の合間に、東の空にいつも聳えて見えるのが飯豊山で季節ごとの美しさに目を瞠った。雲の峰が崩れて金床雲になる夕日に金色に輝く勇姿は今も思い出す。「仰ぐ飯豊は我らが心」と校歌にあり時々口遊むことがあるほどだ。
 長堤十里と謳われた桜で美しい加治川も色々思い出多い川である。上流の鮎釣り、河口の鯊釣だ。
 中学校の恩師たちは実に個性的だった。その中で一番はシベリア抑留から還った数学の渋木先生だろう。革靴の上皮を半分切り取って作ったスリッパを鳴らして校内を闊歩し、素行の悪い生徒を見つけると立たせて、そのスリッパでビンタを食わせるのである。シベリアの厳しい寒さを、トイレに入る時は鶴嘴などで筍のように立っている便を叩き崩してから用を足すことで表現した。中学時代に科学班、新聞班に属し、一時籠球部のマネージャーもやらされた。1957年10月4日にソ連が打ち上げた最初の人工衛星スプートニク1号、続く2号を校庭に集まって見上げた夜空の美しさも格別であった。新聞の編集を終わって下校する道筋にNHKラジオから「にあんちゃん」の主題歌が流れて来た。哀愁に満ちたメロディーだった。

          ————————————————

 2025年1月、返り咲いたトランプ大統領のアメリカが再び始まった。就任演説では、プロンプターで筋書きを追いながらも自分の語り口で実に力強くトランプの理想とする世界観を30分間淀みなく語り尽くした。見事な物であった。バイデン政権で傾いたアメリカ経済を再び世界一に取り戻すというが、アメリカ経済は変らずに一人勝ちが続いている。世界に冠たるアメリカだと思うがそれでも満足をしないアメリカ人のエネルギーの底力が見える。英国を追われて新大陸アメリカに渡って来た開拓者魂が遺伝子になっている。国民がいつまでも銃器を手放せないのは略奪が彼らの歴史だったからだろう。優秀な移民がアメリカの科学技術を発展させ国力を富ませていながら、近隣諸国からの労働移民を嫌う矛盾も、身勝手と言いながらアメリカの現実である。アメリカ・ファーストで他国のことに関わらないという姿勢が世界をどのように向かわせるか知りたい。ウクライナが尊厳を守って終戦を実現できるかも知りたい。自国中心主義が世界をバラバラにしかねない危険をはらむ中でアメリカの知性が問われる時代がしばらく続く。トランプの任期が切れる4年後の世界を見るために私は健康に留意して長生きする積りだ。
 韓国ではユン大統領が逮捕され混沌としている。