はいかい万華鏡(20)
─メジャーリーグの凄さ ─
蟇目良雨
昭和37年、38年頃の貧しさについて少し記しておきたい。
此のころ父は朝日新聞を退社していたが、私は、煙草を吸ったり酒を呑んだりと学生生活を背伸びして謳歌していた。後年分かったのだが、私は気管支拡張を患っていて無理をすると寝込んだり、血痰を吐くことがあった。このときも血を吐いて苦しんだのだが、父の健康保険は失効していて、私には健康保険がなかった。そこで困って大学に相談したら保険扱いで治療を受けることが出来た。これには感謝しているが、どんな方法だったのか覚えていないのだ。申し訳ないことである。
混声合唱団はステージに立つ時に学生服か、上は白ワイシャツを着用すればよかったのだが、次第に舞台映えを意識して、男子はお揃いのネクタイを着用することが決まった。ここ迄は自分の小遣いで賄えたが、次にお揃いのブレザーを着用しようとなった。費用は3,000円。こうなると親に頼まなくてはならなくなって、親に手紙を書いたら、直ぐは用立て出来ないから少し待ってくれと返事が来た。今で言えば3万円ほどであろうか。東京に遊学させることの親の大変さを今にして感じている。
総選挙があって有楽町の朝日新聞本社で選挙資料整理のアルバイトをひと月ほどやったことがある。友人の大沢洋子さんの父が朝日の上の方にいた関係で誘われたのだが、まだ、数寄屋橋の下を水が流れていた頃で社内には輪転機がごうごうと新聞を刷っていたのを見学させて貰った。裏口に新聞を発送するトラックがずらりと並んでいた活気にあふれた光景が今でも見える。
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MLB(メジャーリーグ)の凄さ
11月2日同人句会の日に、海の向うではMLBの最終第7戦が行われていた。ナ・リーグのドジャースには今をときめく3人の大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希ら日本人選手が活躍しているからどうしてもドジャースの戦況が気になる。負けていた試合が延長11回で5対4で逆転勝利したことを知り安堵して帰路についた。対戦相手のア・リーグのブルージェイズがカナダ・トロントのチームであり、ブルージェイズとは「青い懸巣」であることなど初めて知った。懸巣のことから直ぐ皆川盤水先生の〈ふんだんな懸巣の声や阿弥陀堂 盤水〉が思い浮かび鳥俳句の名手と呼ばれた盤水先生を懐かしむ一瞬もあった。
家に帰った私は、録画していた同試合を見直していた。結果の分かったスポーツ番組は気の抜けたビールのようで興味が半減するが、敢えて見たのは、普通は優位なホームのカナダで行われた試合であり、かつ、あれほど優勢に試合を進めてきたブルージェイズが何故負けたのかに興味があったからだ。
ブルージェイズには32年ぶりの優勝が懸かっていた。しかもカナダのチームであり、地元トロントではカナダとしてアメリカを倒せとばかり熱狂するファンが後押ししていた。勝たねばという気持ちの昂ぶりに冷静さを失ったために最後は敗れたといえるかも知れないが、勝負の行方は、最後は神の手に委ねられていると思わざるを得ないほどの名勝負であった。MLBの凄い試合を見て満足したのであった。
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