「俳句文法」入門 (11)          
─ サ行変格活用について ─             大林明彦 

 語尾がサ行のシスセの三音に活用する動詞をサ行変格活用という。基本形が〈す〉で、語幹と語尾の区別がない点はカ変と同じである。複合動詞は別。未然形から順に〈せ・し・す・する・すれ・せよ〉と活用する。 例語には尊敬語の「おはす」「います」があるが、その時は「おは」「いま」が語幹。
 「す」は他の語に付いて無数のサ変複合動詞を作る。漢語につく愛す死す具す成就す制す、名詞につく心す門出す心地す物す、用言の連用形につく送りす久しうす専らにす等々。各活用の例句例語。
疲れ鵜の羽叩きもせで哀れ也内藤鳴雪
老農のかすれ声して酷暑かな久保木恒雄
落ち鷹の高き梢に一鳴きす澤聖紫
秋深き隣は何をする人ぞ松尾芭蕉
立つ音すれば帰り給ひぬ(源氏物語・若紫)
我をいかにせよとて捨てては…(竹取物語・昇天)

 また「弁ず」「重んず」等の複合動詞はザ行音になるがサ変と呼ぶ。変格活用はサカナラ変の四つ。正格活用は四段・上一上二段・下一下二段の五つ。文語文法では活用の種類は九つ。口語では五つになる。