「俳句文法」入門 (12)
─ 音便について ─ 大林明彦
発音の便宜上単語の音が変わるのを音便という。主に動詞の四段・ナ変・ラ変の活用に生じ、イ音便、ウ音便、撥音便、促音便の四つがある。口語化表現である。本誌に音便の使い手の巧みがいて注目していた。
①噺家のするりと脱いで夏羽織柿谷妙子
②上と下声かけ合うて杏捥ぐ柿谷妙子
③たんぽぽを踏んで測量始まりぬ柿谷妙子
④志士の碑を上りきつたる蝸牛柿谷妙子
①はイ音便。「脱ぎて」のイ音便化。そのとき下につづく「て」は濁音化する。話し言葉になる。
②はウ音便。「合ひて」のウ音便化。合(お)うてと転音。
③は撥音便。「踏みて」の音便化。撥音化につづく
助詞・助動詞は濁音化する。踏んだり。学んだり等。
④は促音便。「切りたる」が「きつたる」となる。
促音便→つまる音は歴史的仮名表記では小文字ではなく「つ」「ツ」と書く。「すつきり」「デツキ」等。
各音便は主に順接の接続助詞〈て〉と完了・存続の助動詞〈たり〉へとつづくとき発生する。
泣き笑ひもう酔うてゐる濁り酒石鍋みさよ
吹つ切れしもののありけり流れ星沖山志朴
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