「俳句文法」入門 (36) 
─── 助動詞「む」について  ───           大林明彦

 助動詞「べし」は形容詞「宜し(うべし)」(もっともだ・まことに当然だ、の意)の「う」が脱落して助動詞になったものだといわれます。さすが我らが祖先、造語の名人ですね。省略語や転音語など自由自在に変化・進化させています。今も同じですね。乱れつつも進化していると見たいもの。今後の展望。
 日本の文語の品詞の数はいくつありますか? そう10品詞です。動詞・形容詞・形容動詞・助動詞・名詞・副詞・連体詞・接続詞・感動詞・助詞、以上です。今は助動詞で「べし」の所。何とか「春耕」から引用しようと探しましたが、伊藤伊那男さんの句で漸く叶いました。助動詞は約32語。今が天下の険。
 次は「べし」もそうであった推量の助動詞について紹介してゆきます。「む(ん)」「むず(んず)」「らむ」「けむ(けん)」などあり、現在推量が3つ、過去推量(・・・ただろう、と訳す)が1つ、けむ(けん)。
あるがまま生きこの先冬満月石田瑞子
 この「む」は意志・決意をあらわす助動詞か。他に適当・勧誘(・・・のがよい。・・・たらどうだと訳)・仮定(・・・としたら)・婉曲(・・・ような)の意あり。