「俳句文法」入門 (37) 
─── 推量の助動詞「むず」「らむ」 ───           大林明彦

(1)助動詞「むず」は「むとす」の約語で「む」と同じ意味で使われる。「む」を強めた言い方。

基本形未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用の型
むず ○ ○むずむずるむずれ ○サ変型
<んず> ○ ○<んず><んずる><んずれ> ○サ変型

 ①推量(・・・ダロウ)竹取物語「・・・詣で来むず」やって来るでしょう。②意志(・・・ヨウ・・・ツモリダ)平家物語「自害をせむずれば・・・」自害をするつもりなので。③適当(・・・ノガヨイ)保元物語「手分けをこそせられむずれ」手分けなさるのがよい。④婉曲(・・・ヨウナ)竹取物語「さる所へまからむずるも・・・」そのような所へ参りますようなことも。⑤仮定(・・・トシタラ)保元物語「一方より攻めむずるに・・・」一方より攻めるとしたらそのとき。「むず」は未然形に接続する。

(2)「らむ」は現在推量の助動詞、らんとも。四段型に活用。○○らむ・らむ・らめ○。終止形に接続。
 ①現在推量(今頃ハ・・・ダロウ)伊勢物語「・・・夜半にや君が一人越ゆらむ」夜中にあなたが一人で今頃は越えているだろうか。②推量(ダロウ)源氏物語「いかで世におはせむとすらむ」伝聞・婉曲の意もある。