「俳句文法」入門 (48)
─── 各助詞「へ」について ─── 大林明彦
体言に接続。へ行く、という用例が多い。「に」と比べると成立年代が遅く、上代では用例が少ないとされる。(ベネッセ古語辞典より)。機能は次のとおり 。
①方向を表す(…の方に。…に向って。)
②帰着点を表す。(…に。)帰着の動詞を伴う。
③対象を表す。(…に対して。)動作の動詞を伴う。
④場所を表す。(…に。)主に口頭語に使われる。
朝靄の中へ濃霧のなだれ込む小池伴緒
津軽より蝦夷へ流るる鰯雲升本榮子
出羽富士の裾から裾へ稲を刈る高橋栄
手に握るどんぐり母へ土産とす荻野智子
碧空へ花湧きあがる百日紅佐々木加代子
格助詞「へ」は元々①の意で、遠く離れた地点へ向かって移動するその目標を示す場合に用いられた。平安の中期までは必ず「行く」を伴った。その後「来(く)」等の移動を伴う語に使われた。②③は主に鎌倉時代以降、④は主に室町時代以降の口頭語で使用。
室町時代に「京へ筑紫に坂東さ」の諺あり。京でへというのを筑紫ではにといい坂東ではさという。方言差の事。上中下か。「どこさ行く」品が落ちる?
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