「俳句文法」入門 (51)
─── 格助詞「より」について ─── 大林明彦
体言(名詞)と連体形につく。
①起点を表す。(動作・作用の)
土佐日記「大津より浦戸をさして漕ぎ出づ。」
亥の子餅佐田岬より届きけり中島真理
②比較を表す。平家物語「所々で打たれむよりも」
時雨るるは雪より寂し三千院杉阪大和
炬燵より背低き老となられけり高浜虚子
菊映ゆる厨子より黒き御像(おんすがた)水原秋桜子
③手段・方法を表す。徒然草「徒歩より詣でけり。」
(このよりの使用は稀で「にて」の使用が多い。)
④即時を表す。(…やいなや。…とすぐに、と訳。)
徒然草「名を聞くよりやがて面影は…」
注ぎ零してより盛り上がる年忘朝妻力
草の葉を落つるより飛ぶ蛍かな芭蕉
⑤通過する場所を表す。(…から。…を通って。)
今昔物語「有明の月の板間より屋の内に…」
⑥限定を表す。金葉集「花よりほかに知る人もなし」
愛するは君より無しと月の夜詠み人知らず
「より」は意味の範囲が広く平安時代に多用。鎌倉時代以降起点を表す「から」が常用され今に至る。
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