「俳句文法」入門 (66) 
─── 終助詞「もがも・もがな・も・かな」について ───           大林明彦 

 文末に用いられる助詞を終助詞という。願望・詠嘆・感動・禁止・念押などの意味がある。種々の語に付く。願望の終助詞に「もがも・もがな」がある。
  「焼き滅ぼさむ天の火もがも」(「万葉集」
  「紅葉をたかむ人もがな」(「徒然草」
  黄菊白菊其の外の名はなくもがな  服部嵐雪
   訳は「…がほしいなあ。…だといいなあ」である。願望の終助詞「もが」に感動の間投助詞の「な」と「も」が付いたものという説もあるが、全体で一語の 終助詞とみる説もある。私は後者の説を推したい。
 この願望の終助詞には類語が多い。「もが」「もがもな」「もがもや」「もがもよ」「がな」など。
   終助詞「も」も多出する。詠嘆・感動を表す。涙ぐまし。鶯鳴くなど。詠嘆・感動の終助詞には「かな・な・か・かも・は・よ」等がある。6月号より。
鎌倉の遠くなりたる虚子忌かな蟇目良雨
消防団総出の村の野焼かな坂口富康
蜜蜂のふいふいと蕊替ふるかな仲間文子
 禁止は「な来」(勿来)「鳴き」など。念押は「ぞ」「大将軍」「かし」「起こせかし」など。