「俳句文法」入門 (67)
─── 願望の終助詞「ばや・なむ」について ─── 大林明彦
「ばや」は自分が「…したい」という願望を表す。自己の願望である。「なむ」は他の者に「…してほしい」という願望を表す、他者への願望である。
どちらも未然形に付く、「行かばや→行きたい。晴れなむ→晴れてほしい。)
「遠き都に帰らばや」(小景異情) 室生犀星
若葉して御目の雫拭はばや 松尾芭蕉
年の市線香買ひに出でばやな 松尾芭蕉
一時を庭の桜にすごさばや 高浜虚子
「出でばやな」の「な」は感動を表す。「出たいものだなあ」。「な」は願望を表す時あり。家聞かな。
「なむ」はひとりごとを言うように使う場合が多いとされる。「なん」と表記されることもある。
「惟光とく参らなむ」とおぼす (源氏物語)
(「惟光が、早く参上してほしい」とお思いになる)
「桜花散らずあらなむ」 (万葉集)
「今ひとたびの御幸待たなむ」 (拾遺集)
(散らずにいてほしい。待っていておくれ。と訳)
春よ晴れなむ明日はわが誕生日 詠人しらず
燃え盛る薔薇よ咲かなむ恋を得し 詠人しらず
- 2024年11月●通巻544号
- 2024年10月●通巻543号
- 2024年9月●通巻542号
- 2024年8月●通巻541号
- 2024年7月●通巻540号
- 2024年6月●通巻539号
- 2024年5月●通巻538号
- 2024年4月●通巻537号
- 2024年3月●通巻536号
- 2024年2月●通巻535号
- 2024年1月●通巻534号
- 2023年12月●通巻533号
- 2023年11月●通巻532号
- 2023年10月●通巻531号
- 2023年9月●通巻530号
- 2023年8月●通巻529号
- 2023年7月●通巻528号
- 2023年6月●通巻527号
- 2023年5月●通巻526号
- 2023年4月●通巻525号
- 2023年3月●通巻524号
- 2023年2月●通巻523号
- 2023年1月●通巻522号
- 2022年12月●通巻521号
- 投稿タグ
- 終助詞「ばや・なむ」について