「俳句文法」入門 (67)
─── 願望の終助詞「ばや・なむ」について ─── 大林明彦
「ばや」は自分が「…したい」という願望を表す。自己の願望である。「なむ」は他の者に「…してほしい」という願望を表す、他者への願望である。
どちらも未然形に付く、「行かばや→行きたい。晴れなむ→晴れてほしい。)
「遠き都に帰らばや」(小景異情) 室生犀星
若葉して御目の雫拭はばや 松尾芭蕉
年の市線香買ひに出でばやな 松尾芭蕉
一時を庭の桜にすごさばや 高浜虚子
「出でばやな」の「な」は感動を表す。「出たいものだなあ」。「な」は願望を表す時あり。家聞かな。
「なむ」はひとりごとを言うように使う場合が多いとされる。「なん」と表記されることもある。
「惟光とく参らなむ」とおぼす (源氏物語)
(「惟光が、早く参上してほしい」とお思いになる)
「桜花散らずあらなむ」 (万葉集)
「今ひとたびの御幸待たなむ」 (拾遺集)
(散らずにいてほしい。待っていておくれ。と訳)
春よ晴れなむ明日はわが誕生日 詠人しらず
燃え盛る薔薇よ咲かなむ恋を得し 詠人しらず
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