「俳句文法」入門 (68) 
─── 終助詞「な」について ───           大林明彦 

 終助詞「な」は文末について詠嘆(…だなあ。)を表す。「花の色は移りにけり」(「古今集」)
突として蜩の鳴き出でたり高浜虚子
 用言の終止形につく。ラ変は連体形につく。禁止を表す「な」もある。「過ちす」(「徒然草」)
ふるさとの此松伐る竹伐る高浜虚子
忘るよ藪の中なる梅の花松尾芭蕉
忘るはラ行下二段活用の終止形。「よ」は念押しの意を表す終助詞。終助詞の二連発。勿論〈や・よ・を〉は間投助詞ですからそう呼称しても可。ただ文末に来る時は終助詞、という学者先生もいます。(私もそう思っています。どちらの呼称も可と思います。間投助詞と考えた方がよいとは佐藤定義師の説。)
 動詞の未然形につき自己の願望・意志を表す「な」がある。「今は漕ぎ出で(「万葉集」)
 墓地を過ぐ久しの夏帽あす脱が中村草田男
 他への願望・勧誘・期待を表す「な」が「家聞か」「万葉集」の「な」です。(あなたの家はどこか聞きたい、と訳)この願望・意志を表す「な」は奈良時代特有の用法とされる。とても利便性が高い。