「俳句文法」入門 (69)
─── 詠嘆・感動の終助詞「か」について ─── 大林明彦
佐渡おけさに「佐渡はいよいか住みよいか」と歌われるこの「か」はどういう意味か聴くと、疑問の意味に捉える人が少なくない。が、この「か」こそ詠嘆・感動を表す終助詞の「か」なのだ。
この詠嘆・感動を表す「か」は体言(名詞)に接続する。また用言(動詞・形容詞等)の活用語の連体形に接続する。「佐渡は居良きか住み良きか」が口語化してイ音便になったものなのである。「良き」は形容詞「良し」の連体形。居よいなあ住みよいなあ、という意味である。居心地がよい住み心地がよいなあ…。いわば同じ事をくり返して強調している。例句三句。
雨の日やけふは熟路を歩まんか中村草田男
蚕のごとしねむりほとほと身の透くか加藤楸邨
夕鰺のたたきの旬しゆんとなりけるか水原秋櫻子
三句いずれも終りに来ている助詞すなわち終助詞。
いつも苦しい時の神頼みでお世話になっている七田谷まりうす氏の訳をご紹介しよう。草田男の下五「歩みたいなあ」。楸邨の下五「身が透くことだなあ」。秋櫻子の句は「鰺のたたきの旬となったことだなあ」。以上七田谷さんの訳でした。「か」は他に係助詞あり。
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