「俳句文法」入門 (70) 
─── 副助詞について 其の1「ばかり・まで」 ───           大林明彦 

 副詞と副助詞とはどう違うのか?という問があった。副詞はそれ自体に意味があり用言に付く。意味とは状態(すくすくと)・程度(少し・やや)・呼応の三種類である。副助詞とはある語に付いて意味を添えて用言に付く助詞のことである。古文では、だに・すら・のみ・さへ・など・ばかり・まで・し・しも、等がある。蝨(だに)・蚤(のみ)に事寄せて覚える。無きにしもあらず。是は部分否定(必ずしも…ではない)。古事記の「大和うるはし」は強調の副助詞。大和を強め、うるはし(麗し・美し)にかかる。ばかりまでの例句。

針仕事止めろとばかり褥暑かな尾碕三美
夏ばてか弱気ばかりが先行す久保木恒雄葭切のただ鳴くばかり遊水池島村真子

 程度(…くらい。…ほど)を表すのが尾碕氏の句。限定(…だけ)を表すのが久保木、島村両氏の句。
黒百合や山小屋はあと一里酒井登美子夜の白むまで独奏の虎落笛棚山波朗日傘まで燃えつきさうな極暑かな飯田千代子
 酒井氏のは空間的な限度を表し、棚山氏のは時間的な限定を表す。飯田氏のは状態の至り及ぶ程度を表す。