「俳句文法」入門 (71)
─── 副助詞について 其の2「だけ・のみ・さへ・など・し」 ─── 大林明彦
副助詞「だけ」は限度・限定を表す。
大寒波指先だけで顔洗ふ山城やえ
ぶらさがるだけの鉄棒子ら小春朝妻力
その他に程度を表す場合がある。多くは指示代名詞の「これ・それ・あれ」などの下につく。江戸時代になってこの「だけ」に代って「きり」が用いられた。
副助詞「のみ」は限定を表す。体言や連体形につく。
凍蝶を箔のこぼれと見たるのみ星野麦丘人
またその限定に更に指示強調する意を表す。
茶の花や淵のみ残る名栗川水原秋桜子
副助詞「さへ」は添加を表す。「更に…迄も」の意。
春燈火なつかし母の死臭さへ山田みづえ
また類推・推量させる意を表す場合がある。
この新樹月光さへも重しとす山口青邨
(程度の軽いものから重いものを推量させる場合)
副助詞「など」は例示して他にも類例がある事を表す。婉曲を表す場合もある。「雨など降るもをかし」
老大事春の風邪などひくまじく高濱虚子
胡桃など割つてひとりゐクリスマス山口青邨
中村汀女の「花昏し今しけはしき雲よりも」は強調。
- 2025年1月●通巻546号
- 2024年12月●通巻545号
- 2024年11月●通巻544号
- 2024年10月●通巻543号
- 2024年9月●通巻542号
- 2024年8月●通巻541号
- 2024年7月●通巻540号
- 2024年6月●通巻539号
- 2024年5月●通巻538号
- 2024年4月●通巻537号
- 2024年3月●通巻536号
- 2024年2月●通巻535号
- 2024年1月●通巻534号
- 2023年12月●通巻533号
- 2023年11月●通巻532号
- 2023年10月●通巻531号
- 2023年9月●通巻530号
- 2023年8月●通巻529号
- 2023年7月●通巻528号
- 2023年6月●通巻527号
- 2023年5月●通巻526号
- 2023年4月●通巻525号
- 2023年3月●通巻524号
- 2023年2月●通巻523号