「俳句文法」入門 (71) 
─── 副助詞について 其の2「だけ・のみ・さへ・など・し」 ───           大林明彦 

 副助詞「だけ」は限度・限定を表す。
大寒波指先だけで顔洗ふ山城やえ
ぶらさがるだけの鉄棒子ら小春朝妻力
 その他に程度を表す場合がある。多くは指示代名詞の「これ・それ・あれ」などの下につく。江戸時代になってこの「だけ」に代って「きり」が用いられた。
 副助詞「のみ」は限定を表す。体言や連体形につく。
凍蝶を箔のこぼれと見たるのみ星野麦丘人
 またその限定に更に指示強調する意を表す。
茶の花や淵のみ残る名栗川水原秋桜子
 副助詞「さへ」は添加を表す。「更に…迄も」の意。
春燈火なつかし母の死臭さへ山田みづえ
 また類推・推量させる意を表す場合がある。
この新樹月光さへも重しとす山口青邨
(程度の軽いものから重いものを推量させる場合)
 副助詞「など」は例示して他にも類例がある事を表す。婉曲を表す場合もある。「雨など降るもをかし」
老大事春の風邪などひくまじく高濱虚子
胡桃など割つてひとりゐクリスマス山口青邨
 中村汀女の「花昏し今けはしき雲よりも」は強調。