「俳句文法」入門 (73)
─── 「係り結び」について 其の1 ─── 大林明彥
文は活用語の終止形で言い切る。しかし係助詞があって、強調したり、疑問や反語を表したりする場合は文末に終止形以外の活用形が要求される。例「好きは物の上手なり」→「好きこそ物の上手なれ」(好きであることは物の上手になる重要な条件である。旺文社の国語辞典の訳)。係助詞こそは強調で「じつに、なんといっても、まことに、いちばん、ほんとうに」などの意を表す。ぞよりも強意がつよいとされる。係結びで一番強い調子が「こそ—已然形」とされる。徒然草にはこの用法が多い。最大強調表現で印象的にしたい意図があろう。平板な日本文の工夫の一つを古人は発明したのである。係り結びの法則という。
元旦は田ごとの日こそ恋しけれ松尾芭蕉
こそを係りといい、呼応する語を結びという。この芭蕉の句のばあい係りは「こそ」ですね。では結びはどうでしょう? 「けれ」ではありませんね。「恋しけれ」ですね。恋しけれ、は形容詞シク活用の已然形だからです。恋しけれ、で一語です。「月こそ美しけれ」はどうでしょう? 係りは「こそ」、結びは「美しけれ」ですね。「雪こそ降りけれ」是はこそ・けれ。
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