「俳句文法」入門 (75) 
─── 「係り結び」について 其の3 省略法───           大林明彥

 係り結びの省略について。係助詞が文中にあっても文脈から判断して類推できる言葉が結びになる場合、結びの語を省略することがある。たとえば源氏物語の冒頭の「いづれのおほん時にか、」である。疑問の係助詞「か」の次には「ありけむ」が省略されている。係りが「か」で結びが「けむ」(過去推量の助動詞「けむ」の連体形)である。「か」の上の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形である。
 引用の格助詞「と」に係助詞「ぞ」がつくと、「言ふ」「聞く」「思ふ」などが省略されることがある。
 断定の助動詞「なり」の連用形の「に」に係助詞の「や」がつくと、あり・侍りなどがつく。にあら

春惜しむおんすがたこそとこしなへ 水原秋桜子
 この句は「こそ—なれ」の省略法ですね。「とこしなへ」のあとに断定の助動詞の已然形が省略。
枯菊を焚くにほひこそ雑草園 山口青邨
 この句も「なれ」などが省略されているでしょう。省略することによって余韻・余情をただよわせるのが省略法のねらいですね。次は「あはれなれ」などか。

山桜諸法荘厳なればこそ 高浜虚子