「俳句文法」入門 (78) 
───終助詞について 其の2 ───           大林明彥

 文末(句末)の種々の語に付き詠嘆・強意・禁止・願望などの意味を添え、文や句を終止させる詞を終助詞という。詠嘆の「かな」は代表的な切字である。

藻を焼いて濱の煙れる雨水かな棚山波朗
卒寿まで生きて見上ぐる桜かな池内けい吾
擂鉢にとれぬ木の芽のかをりかな堀井より子
啓蟄の落ちてころがる釦かな実川恵子
舗装路の罅に咲きたるはこべかな 本間ヱミ子
 棚山俳句が季節感を軽妙に断定するとは七田谷まりうす氏の指摘。感動・強意・断定等の意味が加わる。「よ」「か」は、詠嘆・呼びかけ(勧誘)等を表す。

春うららばあばも少し遊ばう山本由芙子
春火鉢餅でも焼いて食べやう小林休魚
 2句共に呼びかけであり、勧誘の意味である。「かし」は命令形に付き、念押し・強意強調を表す。
降る雪よ今宵ばかりは積れかし夏目漱石
 次の「よ」は感動・詠嘆の意で強調が加わろう。
学舎は合唱復習ふ長閑さ渡辺喜美子
花冷えのコートの袖の短さ矢田部美保
風死して井戸水甘きふるさと池内けい吾