「俳句文法」入門 (79) 
─── 終助詞「かな」の再考と「な」の用法 ───大林明彥

 「かな」は感動・詠嘆を表す終助詞で俳句では切れ字として重宝される。七田谷まりうす氏の「断定を強める」との発言が心に掛り考えた結果、「かな」の上には断定の助動詞の「なり」の連体形の「なる」が省略されている事に気づいた。現代語訳では「であるなあ」「なあ」となる。この尺度で「かな」の用例を見ると殆ど当て嵌まる。坪井研治「藁しべの燃えて程よき目刺かな」祢津あきら「夜桜に秘仏浮き出す東寺かな」濱中和敏「ふる里は墨絵の如き朧かな」蟇目良雨「宙返りして妻を呼ぶ燕かな」秋山淳一「桃咲いて空を切り取る白さかな」等々皆断定の「なる」の略と考えられる。七田谷氏は私の文法の先達のお一人で感謝に堪えない。合掌。
 「な」は禁止を表す終助詞。動詞の終止形につく。加藤楸邨に「戦するな」との句の一部があった。是は「戦な」とも言える「する 」は口語の終止形で「 」は文語の終止形。

ふるさとの此松伐る竹伐る高濱虚子
 「伐る」は口語の他動詞五段活用の終止形。広く一般的には切るが使われるが、特に樹木を伐採する場合は伐るを使う。
 この「な」の用例を「春耕」に探したが発見できなかった。