自由時間 (79) 回顧2019年 山﨑赤秋
禍福は糾える縄の如し。
西暦2019年、平成31年/令和元年の日本にも多くの災いがあり、多くの慶事があった。年末恒例の今年の10大ニュース風に順に振り返ってみる。
1月3日、韓国の大邱(テグ)地方裁判所浦項(ポハン)支部が韓国内にある新日鉄住金の資産差し押さえを認める決定を出した。前年10月に、韓国大法院(最高裁)が同社に韓国人元徴用工への賠償を命じる判決を確定させたのを受けたものである。この問題は、1965年締結の日韓基本条約や日韓請求権協定で最終的に解決済みのはずであったが、大法院はそれを否定したのである。非人道的な不法行為に基づく慰謝料の請求権は消滅しないという理由で。(ただし、日本企業でなく韓国政府が元徴用工に補償すべきだとする判事もいた)
韓国政府が何の対応もしなかったので、日本政府は7月から韓国向け半導体材料の輸出手続きを厳しくした。これが韓国世論に火をつけた。日本製品不買運動が起こり、日本への旅行客が激減した。今まで輸入ビールでは首位だった日本のビールがすっかり売れなくなり、とうとう10月の日本からの輸出はゼロになった。韓国の航空会社6社の7~9月期の決算は全社とも最終損益で赤字に転落した。
8月には、韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告(後に米国の圧力により回避)してくるなど日韓関係は史上最悪の状況にある。年末になって、やや改善の兆しが見えてきているがどうなるだろうか。前述の差し押さえ資産の売却は、未だ行われていない。
1月24日、千葉県野田市の小学4年生・栗原心愛(みあ)ちゃん(10)が、自宅浴室で父親から虐待を受けて死亡した。女児は日常的に虐待されており、両親が逮捕され、傷害致死罪などで起訴された。前年3月に東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)も両親から虐待されて死亡、6月にも札幌市中央区で池田詩梨(ことり) ちゃん(2)が衰弱死。相次ぐ児童虐待事件。2月、国連の子供の権利委員会は、日本で子供への虐待などの暴力が高い頻度で報告されていることに懸念を示し、政府に対策強化を勧告した。親による子への体罰禁止などを骨子とする改正児童虐待防止法が6月に成立した。
2月22日、探査機はやぶさ2が、小惑星リュウグウへの着地に成功。石や砂などの試料を採取したあと、11月に地球に向けて出発。約1年後に帰還の予定。
3月21日、米大リーグ・マリナーズのイチローが現役引退を表明。東京ドームで行われたマリナーズ対アスレチックスの開幕第2戦が最後の舞台となった。試合中にそのことが明らかになり、観客は試合が終わっても帰らず、イチローを待つ。再登場したイチローはフィールドを1周して観客のオヴェーションに応える。実に感動的な場面だった。
4月1日、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理・難民認定法が施行。問題の多い技能実習制度のようにならなければよいが。
5月1日、皇太子徳仁親王殿下が第126代天皇に即位。元号が令和に。10月22日には即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」、11月10日には、パレード「祝賀御列の儀」が行われた。
7月6日、仁徳天皇陵古墳を含む「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)が世界文化遺産に登録。
7月18日、いい仕事をすることで評判のアニメ制作会社「京都アニメーション」の第一スタジオ(京都市伏見区)に男が侵入し放火、36名死亡。
9月9日の台風15号、10月12日の台風19号、10月25日の台風21号により関東・甲信・東北は記録的な大雨となり、河川の氾濫・決壊が相次ぎ、甚大な被害をもたらした。死者・行方不明者は100名を超えた。千葉では、電柱がなぎ倒され、大規模な停電が続いた。地球温暖化の影響によるものであることは明らかだ。地球規模の話であるが、すぐに何か手を打たねば。
9月20日、ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会が開幕。日本代表は予選リーグ4戦全勝で初の8強入りを果たすが、残念ながら準々決勝で南アフリカ代表に敗れた。にわかラグビー・ファンが増えて大いに盛り上がったが、このブームはいつまで続くか。
10月1日、消費税率が8%から10%に引き上げ。外食と酒類を除く飲食料品の税率を8%に据え置く軽減税率制度が導入され、レジが混乱。次の引き上げはいつだろうか。国の借金が国民一人当たりにすると900万円もあるから、そう遠くない将来に再引き上げ必至。
10月9日、今年のノーベル化学賞にリチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰・名誉フェローが選ばれる。12月10日、授賞式。
10月31日、首里城焼失。
11月23日、フランシスコ教皇が来日。ローマ教皇の来日は1981年のヨハネ・パウロ二世以来2度目。長崎と広島で核兵器廃絶を訴えた。3泊4日というあわただしい日程であったが、その間、10回の講話・スピーチを行った。その中から印象に残る1節を。「わたしたちの後に生まれる人々に、どのような世界を残したいですか。何を遺産としたいですか。」(25日の「三重災害被災者との集まり」での講話)
12月4日、アフガニスタンで医療支援活動や灌漑事業に取り組んでいた中村哲医師が銃撃を受けて死亡。明らかに計画的犯行であるが、動機・背景は不明。麻薬がらみの犯行という未確認情報も。
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