四季の野鳥 (6)         
 燕(ねぐら入り・去ぬ燕)    勝股あきを 

 巣立ち雛はその日から親と共に河原の葭原で寝る。北から順次南下する燕も加わるので、集団ねぐら入りの数は万を数える壮観になる。
 数年前、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅の裏を流れる多摩川に集団ねぐらが出来ていて、地元の愛好家達が、上空に待機する燕のねぐら入りをライト付望遠鏡で一般の人に見せてくれたので、「春耕」の我々も見学したが、ライトの下で葭の葉の上部にねぐら入りした燕は目を開けてしばらく鳴き交している。まるでその日あったことをお喋りしているかのようだ。その内にライトを反射した目の光が減って日没からしばらく後には葭原は闇に包まれる。
 当地より西で最も有名な帰燕の集団地は知多半島の伊良湖岬だが、燕は九州を経て東南アジアまで帰る。面白いのは、親は子が自分で採餌できるようになると先に南に帰るので、当地では九月になると当年生れだけになる。
(例句)
高波にかくるる秋のつばめかな飯田蛇笏
ある晴れた日に乙鳥かへりけり安住敦
ある朝の帰燕高きを淋しめり鈴木真砂女
去ぬ燕ならん幾度も水に触る細見綾子