今月の秀句 蟇目良雨抄出
「耕人集」2026年2月号
清貧はありがたきかな日なたぼこ 桑島三枝子
清貧の有難さを実感するまでの月日があってこその今日だと思う。日向ぼこはまさに清貧の極地。人はお天道様に生かされているからと思えたらしめたもの。
歌謡曲流し捗る雪囲 菅原しづ子
冬百日の始まりの雪囲なので精々賑やかにやろうということ。これからは歌謡曲も大切な友だ。
神の留守言葉をそつと置いてくる 岩﨑のぞみ
鎮守様に詣でたが今は神様が出雲に行ってしまってお留守。願い事をそっとつぶやいて帰って来た。
一茶忌やはらはら白きものの降る 伊藤一花
はらはらと白きものが降る初めは楽しいがその後は一茶の生涯のように辛い日々が始まる。
丹の色に重さありけり冬夕焼 小杉和子
冬夕焼の色を何に譬えようとしても難しい。重さを感じる丹色とは言い得て妙だ。
杣の熊二十歳になりて名は花子 鈴木さつき
樵が飼っている熊が20歳になった、名前は花子と付けてあるということ。
「金太郎」の童話もあるが熊と共生できる社会の来ることを願う作者がいる。
機嫌よし祖父晩酌に湯豆腐を 髙草久枝
祖父母と同居したことが無いので羨ましい光景。私は祖父の年代になり孫たちと同居しているが、孫の目にはどう映っているのだろうかと思わされた。
米の価の相場気になる師走入り 菱山郁朗
江戸時代でもあるまいし、年末に米の値段が気になるなんてことはある筈が無いと思っている人はご注意。長年の自民党政治の結果を突きつけられた気がした。
枯野なる宇陀の城址に日差し濃し 日浦景子
この城跡は宇陀松山城。戦国時代の山城の跡だが、枯野のように見えるということは本丸の辺りが広いのだろう。濃い冬の日差しに嘗ての人々の賑わう声が聞こえそうだ。
岩を咬む比謝の奔流櫨紅葉 玉城玉常
見たことの無い景色であるが、作品は景色をはっきりと描いている。岩を咬むほどの速い流れがある渓谷の櫨紅葉を見たくなる気持を読者に与えてくれる。
甘酒を飲みつつ紅葉眺めもし 平石敦子
女性特有の優しさに溢れる作品。酒でなく甘酒で我慢するところに険しい紅葉谿のような場所が思い浮かぶ。
義士の日や蕎麦屋の主変はりなし 小田切祥子
三百数十年前の討入りが今も昨日のように語られている。書物や歌舞伎などの芸術が齎したものだが、平和な時代だからこそ楽しめるのだ。蕎麦屋の主が決まった。
襟巻に顔をうづめて老和尚 今江ツル子
一見当たり前に見える景色だが、それだけ言葉を省略して出来たということ。老和尚がはまり役だ。
吊し柿日毎夜毎の風の声 竹越登志
夜も昼も風に晒されて吊し柿が出来ていることを美事に表現できた。
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