蟇目 良雨 主宰 作品

身を入れてこその愛憎葛の花
素十忌や空ゆくものはみな光り
葛城の地べたに売るや仏掌薯(つ くねいも)
おけさ柿食べて船酔ひめく日かな
渋柿のしづかに時をやり過ごす
二人ゐて一人に秋思募りけり
近影のみな遺影めきそぞろ寒
ギヤマンに十日の菊を浮かべたる
金継ぎの膠の伸びや十三夜
木犀や大学裏にすこし闇
鶏頭の黝む(あおぐろ)むほど夕日濃し
古書街のうらがは暗し走り蕎麦