蟇目良雨 主宰 作品

炎天
    若き日を憶えば
炎天を愚かな恋の往き来して
俳号の良雨を散らし夏書かな
意思強きをんな酢橘を絞り切る
丹田の念力奪ふ暑気中
向日葵に近づいてゐる馬の貌
終戦日父の昭和を振り返る
朝顔や妻との日々を明らかに
残暑まだ露西亜のごとく居座れる
糸瓜の水子規以後律の使ひけり
鮒つ子や泥鰌つ子混じる水落す
末の子の鬼灯の実をすぐ潰す
鶏頭は拳骨の花母の花