「耕人集」 11月号 感想                          高井美智子

田から田へ跳ねて蝗のたくましや菱山郁朗
 蝗は小柄であるが跳躍力があり、追いかけると、隣の稲田まで勢い良く飛ぶ。捕獲するには至難の業であるが、面白くて田から田ヘと追いかるが逃げられてしまう。小さな蝗のたくましさに感服である。

流灯の頷くやうに揺れて消ゆ雨森廣光
 川の波にそっと流灯を乗せると流れに揺れながら闇へと進む。流灯に声をかけると頷くように応えてくれた。船上の僧侶のお経が流れる中、連れを見つけて消えて行った。身近な人の霊を送る流灯会は、送り火の意味もある。

朝顔の数を読みつぐ子の日記居相みな子
 1年生は朝顔を種蒔きから育てつつ観察日記をつける。夏休みには家に持ち帰り観察を続ける。宿題の日記帳に朝顔の数が増えていく。数に焦点を当てた独自性のある句である。

雷鳴にからくり人形動き出す中谷緒和
 「からくり人形」は古くから作られ、螺子などで動き出す仕掛けである。飾られていた「からくり人形」が、突然の雷鳴に反応して手足が動き出したのである。奇妙な動きの「からくり人形」の謎めきを上手く詠っている。

みせばやと言ふ名に惹かれ買ひ求め面地豊子
 「みせばや」はベンケイソウ科の多年草で古くから観賞用として栽培されてきた。「みせばや」の名前の由来は高野山の法師が、山奥でこの花を見つけ、歌の師匠であった冷泉(れいぜい)為久(ためひさ)に「誰に見せばや 我が思ふ花」の1節を添えて和歌を送ったことによる。「見せばや」は、「見せる事ができるなら」「見せたいものだ」などの願望や希望を表す。
 名前の面白さに惹かれて買った花から、いろんな世界が広がっていくだろう。子どもの頃、この花を挿し木にしてどんどんと増やしたものだ。

うみんちゆの夜漁の食や島バナナ上原求道
 「うみんちゆ」とは漁師のことであるが、島のバナナを食べて、長い夜の漁に励む。沖縄ならではの食材を生かした句であり、類想がなく新鮮である。季語が二つであるが、「夜食」に重きを置いた句となろう。

遠花火残像に音重なりぬ古屋美智子
 花火の美しさを留めたいと思う気持ちが残像となり、さらに音が重なってくる。一瞬の花火の感動を「残像」や「音」から捉えた表現が素晴しい。

甚平の幼駆け込む駄菓子店齊藤俊夫
 スーパーには売っていない昔懐かしい菓子を揃えている駄菓子屋は、子どもにはとても魅力に満ちている。10円玉を握りしめて駆け込む姿が甚平の季語により、開放感の溢れる句となった。