「耕人集」 1月号 感想                          高井美智子

檀の実根付きし庭の住み心地髙梨秀子
 檀の実は鈴生りとなるが、実生として育つのは稀である。芽が出ても辛抱強く3年余り育てると、桃色の実ができ檀だと認識できる。やっとこの庭に檀が根付いたのである。檀にとっても住み心地の良い庭となったようである。

賜りし看とりの試練冬に入る桑島三枝子
 看とりの日々は並大抵の苦労ではなく、試練の日々でもある。作者はこの状況を受け入れ、上五の「賜りし」と表現できるまでになった。お元気だった時から、良い関係だったことが想像できる。大変な状況下の看取りを神から「賜り」、又神からの「試練」を受けているという悟りの心境が感じられる。冬に入り籠りがちになると気持ちも落ち込むが、心も整えているようである。

検査着の糊の固さや今朝の冬今江ツル子
 レントゲン等の検査をする時の検査着は、糊が良くきいており清潔である。不安を抱えながらの検査では、この糊が肌に固く感じる。冬の朝であれば尚更のことである。

甌穴にわれもわれもと落葉かな中村岷子
 甌穴(お うけつ)とは、谷などの急流の岩石面に生じた鍋状の穴である。谷に甌穴がある場合は、急流により渦が巻く。掲句はこの甌穴に落葉がとめどもなく降っている景を詠っている。中七の「われもわれも」の擬人化の表現に独自性があり、臨場感に溢れている。

鰯雲体操の背をのけ反つて岩﨑のぞみ
 鰯雲が空一面にひろがっている。野外で体操をしていると、鰯雲の広がりに気をとられて、背をのけ反ってしまった。

菊枯るやし残したことあるやうに伊藤一花
菊は枯れてもまだ美しい花が残っているので、刈り取らずそのままとした。今年も終りに近づき、何かやり残したことがあるように思う。枯菊を見ていると自分の心情が投影されているようである。

病む母と縁に出て見る赤い月鈴木さつき
 月があまりにも美しいので病気のお母さんを縁に呼んだ。昇り始めの月は赤く大きく、感動的である。病気のお母さんを気遣って、早い時間帯の月を見ている。

小鳥来ておとうと偲ぶ一と日かな竹越登志
 渡って来た小鳥たちが飛び跳ねているのをみていると、亡くなった弟さんとの思い出が蘇った。
 棚山波朗の句がふと浮かんだ。
〈小鳥来ておとうとが来て句碑びらき〉

遥けくて大和三山秋澄めり日浦景子
遠くに大和三山を見ている作者。「遥けくて」は、大和三山を詠った万葉人に思いを馳せているようにも思え、味わいのある句となった。