はいかい万華鏡(3)
─ 卑弥呼はいづこ ─
                                             蟇目良雨 

 昭和19年東京や八王子が空襲を受けていた頃、全国紙の新聞記者だった父は東松山から八高線を使って八王子支局を応援しに通っていた。桑都八王子でしばしば空襲に遭った。その父に昭和20年に入って36歳ながら招集がかかり青森の海岸線の防衛任務に就いたが、間もなく終戦になり帰宅した。この時の記憶は今でも覚えている。細長い軍用バッグから米・林檎・乾パン・金平糖を出して家族に振舞った。実戦を交えなかった父はこの時の勤めを面白おかしく子供たちに語った。
 体の弱かった私だが、素行が悪く担任の女教師が我が家に泣いて母に訴えに来たほどであった。幼稚園へも行かない、勉強もしないので学力はゼロだったと思う。お習字も墨を友達に塗りつけて遊び、体が弱いと免除された体操の時間にも肋木に上って友達を野次っていた。
 そんな私だが小学2年が終る時に川越市へ転校することになった。出来の悪い子をそのまま進級させるわけにはいかなかった学校は2年の過程を終了したという修了試験を私に課した。問題は「ひらがなをカタカナに直す」であった。習ったこともないカタカナを書ける訳も無く呻吟していると、教室の後ろの壁にひらがなカタカナ変換表が貼ってあるのに気が付き背伸びをするふりをして見て解答にした。それを見て見ぬふりをしてくれた宮岡知子先生の温情を今でも感謝している。

 令和も6年になって政治資金裏金問題で自民党の評判が落ちている。岸田文雄首相の勢力基盤の薄さが招いたともいえるが、根本は安倍晋三元首相が力に物を言わせて邪な政治を指導したことが保守本流たるべき自民党の政治腐敗を招いたと思っている。個々人は皆優秀だが党になると正義の通らない姿になってしまった。そこで自民党を誰が立て直せるかという話になって女性政治家の名が数人挙がっている。どうなることだろうか。

 時代は遡って3世紀の日本に卑弥呼がいた。鬼道を扱う女性のイメージが、近年の研究で邪馬台国連合を合議制で率いた指導者としての卑弥呼として定着している。
 狗奴国連合に対抗するために、朝鮮半島を経由して日本に入って来た渡来人を活用し、魏呉蜀三国の争乱を利用して魏に軍船を提供するから邪馬台国連合の後ろ盾になってくれと懇願した結果、魏から「親魏倭王」の金印を貰うことが出来て政権が安定したと言われる。
 卑弥呼が大陸から獲得した技術に鉄の製法と「盛り土」と言う造墓技術が挙げられる。砂、土、粘土などを何層にも重ねた「盛り土」は水害や衝撃に強く、堅固な墓や堤を築くことが出来たとされる。
 技術を大切にする国家像や外交で隣国との争いを避ける思想は現在に通じる。日本に女性首相や女性天皇が出て来てもおかしくない土壌が出来つつあると感じた。