「俳句文法」入門 (21)
─ 助動詞「り」について─ 其の2 大林明彦
「り」の誤用例は下二段活用に多い。現代語の感覚で読むと間違いとは思えないからであろう。出あった例をあげる。「覚えり」「駆けり」「詣でり」「上げり」「集めり」「生まれり」「植ゑり」「混ぜり」「比べり」「食べり」未だあるが今回は十語に留める。古典文法に則る限り以上の用法は誤用又は破格の文法とされる。文語の終止形は殆どウ段音で言い切るから終止形にして見よう。覚ゆ・駆く・詣づ・上ぐ・集む・生まる・植う・混ず・比ぶ・食ぶ。全て下二段活用。
完了・存続の意の「たり」で代替すべきだが、二音になるので「ぬ」か「つ」(二語共に完了と存続の意あり)を使うとよい。覚えぬ、駆けつ、等。
「り」が四段活用の命令形に接続する説は岩波古語辞典に依る。音声学的に奈良期の人は命令形に「り」を付けていたと証明したのだ。明治書院の詳解古語辞典、角川の久保田淳編の古語辞典も是に依る。りは命令形に付かない、已然形に付くことにしようと決めたのは学者達でそれが覆えされたのだ。サ変の「す」も上代の命令形は「せ」の事から、四段・サ変両方共に命令形に付くとの説が岩波と明治書院の辞典である。
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